いま教育の分野で話題の「STEAM教育」。「STEAM」は「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Art(芸術)」、「Mathematics(数学)」の頭文字をとったものですが…
「言葉は聞いたことがあるけど、いまいち何のことか分からない?」
「単にその5つの分野の教育のこと?」
「そんな言葉、聞いたことすらないよ」
と、多くの人にとってまだまだこんな感じかもしれません。
そこで、情報系の国立大学院を卒業している筆者が、STEAM教育に関してポイントを抑えて分かりやすく簡潔に解説。
STEAM教育は、結果を求める教育ではなく、結果を求めるまでの過程を重視した教育です。それでは、この記事を読んで疑問などを解消していきましょう!
STEAM教育へつながる文部科学省のGIGAスクール構想
STEAM教育の説明にさっそく入りたいところですが、STEAM教育を進めていく上でその環境整備に役立った取り組みをまずは紹介。
その取り組みとは、2019年に文部科学省により発表された「GIGAスクール構想」!
GIGAスクール構想とは、簡単に言うと小中高の教育現場で生徒達がパソコンやタブレットを活用できるようにする取り組みのこと。
「GIGA」の意味
「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の略で、そのまま訳すと「全ての(子供の)ための国際的で革新的な扉」となります。つまり、"子供たちのために先端技術を効果的に活用して創造力を鍛えよう"的な意味。
文部科学省は、生徒1人に1台のコンピュータと高速ネットワークを使えるような環境の整備を徐々に進めることで、学びのデジタル化を広めようとしていたんですが…
何とも皮肉なことに、新型コロナウイルスの感染拡大があったことでオンライン授業などが進み、予想を遥かに上回る速度で整備されていくんですよね。
そのことで学校においてコンピュータと高速ネットワークを使った学習が可能になり、これから説明する探究的な学習であるSTEAM教育の選択肢を増やすことにつながっていきます。不幸中の幸いといった感じでしょうか。
STEAM教育とは?
「Art」が加わることでSTEMからSTEAMへ
「STEAM教育」の「STEAM」は、「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Art(芸術)」、「Mathematics(数学)」の頭文字をとったものです。
これは、もともと「STEM教育」という考えが元となっています。では、そもそもSTEM教育はどのような形で広まったのでしょう?
STEM教育は、2000年代のアメリカで提唱された教育モデルでした。そしてそのSTEM教育が、アメリカのオバマ政権下の2013年に国家戦略として発表されます。これにより、この教育モデルは一気に世界的に有名になりました。
米国のSTEM教育の目的
「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Mathematics(数学)」の学問を強化することで、IT技術の急速な発展に対して人手不足が問題となっていた理工系の人材を育成し確保することを目的とした。
アメリカで国策として発表されたSTEM教育ですが、日本は理数系の教科に関しては元々しっかりしていたため、その当時日本ではそこまで話題になりませんでした。
そして、その後、創造性教育である「Art」の重要性が語られ始め、「STEM」に「A」を加えた「STEAM」という言葉が生まれました。
STEAM教育のArtとは?
「Art」は単純に訳すと「芸術」ですが、ここで言う「Art」はもっと広い意味を持っており、「リベラルアーツ」のことを指します。
そのリベラルアーツとは、自由に考えるための手段を含む美術、音楽、文学、歴史などの学習を指し、簡単に言うと「探求する力」や「新しい事物を創造する力」をつける学習のことを指します。
日本でSTEAM教育が推進される理由
このSTEAMに加えられた「Art」を学習することが「探求する力」や「創造する力」を育むのに非常に重要な要素ということが、日本でも認識され始めます。
日本にとっては、「探求する力」や「創造する力」を育てる「Art」の学習が非常に弱いため、せっかく高い理数系の力を持っていても、それを使用して新しい事物を創造することに生かせていないという現状がありました。
そこで、「STEAM教育による文系・理系の枠にとらわれない横断的な学問で、AIやIoTなどの発展よる社会の複雑な問題を認識し、そこに新たな価値を創造できる資質・能⼒をつけていこうじゃないか!」と相成ります。
これが、文部科学省などがSTEAM教育の推進を行っている理由です。
家でもSTEAM教育に挑戦してみよう!
学校でもSTEAM教育が進められていきますが、家でもSTEAM教育に挑戦してみてはいかがでしょうか。どんな方法があるか見ていきましょう!
目標とするところは、自ら問題やテーマを見つけて解決や創造していく力を養うこと。そのためには、自分のペースで楽しみながらできることに挑戦するということが大事!
実験をしてみよう!
ここで2冊の本を紹介しますが、2冊とも写真などが非常にカラフルで見ているだけで楽しくなれる本です。
しかも実験などがたくさん載っており、試すこと自体は決して難しくないのですが、
「なぜだろう?」
「どうすればいいんだろう?」
と考えながらできる内容となっており非常に素晴らしい。
正直言って大人もワクワクできる内容です。何を隠そう、実際私がそうでした!
・ワクワク!かんたん!おうちSTEAM
・わくわく科学実験図鑑
プログラミング学習をしてみよう!
国が目指すSTEAM教育の目的の一つに、プログラミング的思考を身につけるということがあります。ちなみに、プログラミング的思考とは…
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力。
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引」より抜粋
上の表現は少し分かりにくいですが、まとめると「目標を達成するために、やることを順序立てて考え、改善しながら実行していく」という論理的な考え方のこと。
このプログラミング的思考ですが、自分の家でプログラミング学習をして身につけてみてはいかがでしょうか。
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【小学生向け】プログラミング最初の一歩!何から始める?そんな疑問を即解決!
また、プログラミング教室に通って効率よく身につけるということもおすすめできます。
もしプログラミング教室に興味がある方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
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小学生からのプログラミング教室|絶対確認ポイントと無料体験おすすめスクール6選
STEAM教育のまとめ
日本人は、「与えられた問題を正しく解く」ということには慣れていますが、「自分自身で問題を見つけ出し、新たなものを創造する」ということにはあまり慣れていない気がします。
だからと言って、そういった能力が今後もつけられないことはないと思います。
要は考え方!
日本人って、どうしても失敗や間違いを気にしすぎる傾向にあります。自分自身を見つめる時、できることよりもできないことの方を重視してしまい、その結果挑戦しないでおくという選択肢をとることが多い。行動しないことには、新しいことを創造することもできません。
この考え方を変えることが重要!
STEAM教育は、自分で問題を見つけ、その解決法を考え、新しいことを創造していく資質・能力をつけていく教育です。そして、それらの経験を積むことにより、挑戦するということにも慣れ、まずは行動してみるという考え方につながります。
ぜひともSTEAM教育に関する理解を深め、学校の教科だけでなく、親子で協力して「探求する力」や「創造する力」をつけて明るい未来を作っていきましょう!